『本当にこの駅でいいのかな・・?』
いつも、 友人に囲まれていた僕が、
1人で留学する事になった。
言葉も通じない、街の勝手もよくわからない、
待ち合わせ時間になっても誰もこない・・・。
片言の英語しか話せない僕は、途方に暮れていた。
『本当にこの駅でいいのかな・・?』
今日、ホストファミリーと無事に会えるのか、 ちょっと不安になってきた・・。
といっても、無闇に動くわけには行かない。
手持ち無沙汰になってしまい、英会話の勉強でも しようと思ったけど、
疲れてそんな気分でもない。
三味線に近づく男の影
いよいよ、不安になってきたとき、
日本から持ってきた楽器がある事を思いだした。
本体に葛飾北斎の 『赤富士』の絵が描かれた小さい三味線だ。
最近、たまたま読んだマンガに影響されて
『三味線』を始めようとしたら、、
とてもお気楽に始める事は出来なさそうだと、
諦めかけた時に出会った三味線がこれだった。
ほとんど、衝動買いに近い感じだけど、一目惚れ。
今の僕にはドンピシャだったし、何より海外で異文化を体験したり、
アートが好きで、 留学する事が決まっていた僕にとっては
ツッコミどころが無いシロモノだった。
その小さい三味線で「さくらさくら」を 慣れない手つきで
ゆっくりと弾き始めて 3回目、
だんだん慣れてきた頃に、 背のデッカい男が近づいてきた・・。
ホストファミリーではなさそうだ。
さくらさくらで我サクラチル
ちょっと、ビビっていると、
「それはシャミセンか?」「日本人か?」 と
片言の日本語でマシンガントークが炸裂。
どうやら日本に住んだ事もあるらしい。
とにかく、本物のマシンガンじゃなくて良かった。
めんどくさそうなので「好きにドウゾ!」と、
その楽器を手渡して後は放置。
あまりに聞き難い演奏だったので、 棹に貼ってある数字を
「4、4、6、4、4、6・・」 と教えると・・
「さくらさくら」を弾けてしまった。
しかも僕よりも早くマスターし「メチャ嬉しそう」
「なんて事だ」「不安感」にプラスして「敗北感」まで頂いた。
そんな表情を感じ取ったのか、その外人が、
「どうした?」と聞いてきた。「はっ!」として、
ここぞとばかりに 「この場所で合っている?」と聞いたら、
待ち合わせの場所とは反対側の出口だと教えてくれた。
「おー!助かった!」
僕は事情を説明してお礼を言いその場を去った。
そのあと、無事ホストファミリーとも合流ができて、
「それはシャミセンか?」「No、Shamiko・・」
どうやら、また敗北感を味わいそうな予感・・。
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